宗教を考える~イスラム教(イスラーム)④
イスラームの教えの根本は、唯一の神を信じ、ムハンマドをその使徒と認め、神に奉仕し、正しい人間関係を結び、天国に迎え入れられるようにとするものである。コーランに記されたイスラームの教義はイーマーン(信仰)、イバーダート(神への奉仕)、ムアーマラート(行動の規範)からなるとされる。このイーマーンとイバーダートを簡潔に述べたものを六信五柱(行)という。
六信とは、「神」(アッラー)、「天使」(マラク)、「啓典」(キターブ)、「預言者」(ナビー)、「来世」(アーヒラ)、「神の予定」(カダル)の六つを信じることである。アッラーと預言者ムハンマドを信じることが特に重視される。
五行とは、信仰告白(シャハーダ)、礼拝(サラート)、喜捨※1(ザカート)、断食(サウム)、巡礼(ハッジ)を行うことをいう。信仰告白とは、「アッラーの他に神なく、ムハンマドはアッラーの使徒である」と唱えることで、礼拝の時や、イスラームに改宗する時になされる。礼拝は義務として一日五回(夜明け、正午過ぎ、午後、日没後、夜半)行うほか、自発的礼拝も推奨される。礼拝の場所はモスク※2でも構わないが、毎週金曜日の正午の礼拝はイマーム※3の指導のもとにモスクに集(つど)って行われるのが良いとされる。喜捨は、ムスリム(イスラム教徒)の義務として行うザカートのほかに、自発的に行うサダカもある。この義務としての喜捨は定めの喜捨、あるいは救貧税と呼ばれ、各自の一定以上の所有物に応じて定められた額を収(おさ)めなければならない。この徴収された財は孤児や貧困者などの救済に用いられる。断食は、毎年イスラーム暦の第九月(ラマダーン)に日の出から日没まで一切の飲食を絶つことである。これは、飢餓を体験することで貧困者の苦悩を思い、普段の食事などを神に感謝するためであり、病人や授乳中の母親、旅行中の者を除く健全な成人ムスリムすべてに対する義務である。巡礼は、第十二月(ズー・アルヒッジャ)の八日から十日に、定められた順序と方法でメッカのカーバ神殿と聖地に詣(もう)でることをいう。この時には、世界各地から人種・国籍の異なるムスリムが一堂に会(かい)し、神のもとに平等なイスラーム精神を確認し合う場となる。資力と体力があれば、ムスリムが一生に一度は行うべき義務だとされる。
ムアーマラートは、ムスリム同士の人間関係の規範を示したもので、来世において天国へ行く為にとるべき行動である。結婚、離婚、遺産相続、売買、契約等に関する取り決めや利子の禁止のほか、困窮者(こんきゅうしゃ)※4の庇護(ひご)※5、姦淫(かんいん)※6をしないこと、契約の遵守(じゅんしゅ)※7などの倫理的な規定、賭事(かけごと)の禁止、アルコールや豚肉などの飲食物の禁忌(きんき)※8、日常的な礼儀作法等を含む。イスラームでは、アッラーへの信仰が具体的な行為によって表わさなければならないのである。
(引用文献:仏教 キリスト教 イスラーム 神道 どこが違うか)
※1喜捨:喜んで寺社などに財物を寄進し、また貧者に施すこと
※2モスク:イスラム教の寺院
※3イマーム:アラビア語で「指導者」、「模範となるべきもの」を意味する語である。通例は、イスラム教においてムスリム(イスラム教徒)の大小の宗教共同体を指導する統率者のこと。
※4困窮者:困ってお手上げの状態になっている人。ひどく貧しくて苦しんでいる人。
※5庇護:かばい守ること
※6姦淫:男女が不道徳な性的関係を結ぶこと。不倫な情事。
※7遵守:規則、法律などに従い、それをよく守ること
※8禁忌:場所、事柄、行為、言語などで社会制度や宗教上、禁じていること
Tuesday, October 17, 2006
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