Tuesday, October 10, 2006

宗教を考える~キリスト教③

キリスト教が奉(ほう)ずる根本の聖典は新約聖書と旧約聖書である。カトリック教会ではこの他に教会が公に定めた文書などを信仰伝承と称して重んじているが、いずれも新・旧約聖書を聖典としていることに違いはない。
新約聖書はイエス・キリストの福音書※1(ふくいんしょ)と弟子たちの文書を集めたもの、旧約聖書はイエス以前のイスラエルの宗教文書を集めたものである。
キリスト教は自然感情から運命的に発生した宗教と違って、契約宗教であり、個人の自覚と約束を重んずる宗教であると特色づけることができる。
旧約聖書は天地創造から始まって、イエス・キリスト出現の少し前までに及ぶイスラエルの歴史や文書が収められ、信仰的にもいろいろ教訓があり、物語や歴史としてもおもしろいものだが、キリスト教ではそれらはすべてイエス・キリストを証言するものという一点にしぼって価値を認めている。
さて、キリスト教が新・旧約聖書を聖典とするのは単にこのような難しいことだけでなく、実際に信徒の信仰生活にとって役立つ書だからである。人を憎み、あんな嫌な奴はいない方がよいなどと思ったりするとき、「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」というイエスの教えによって憎しみを消し、愛の関係に戻ることができたなどという信仰の証(あかし)をよく聞くことがある。そんなときに聖書はその人にとって「本当に聖典だ、神の言葉だ」と思えるものである。そのためだろうか、聖書は世界中で最も多くの言語に訳された書といわれ、1987年に1,884種類の言語に訳され、愛読されている。日本でも日本語、アイヌ語、琉球語の3種類の聖書がある。

(引用文献:仏教 キリスト教 イスラーム 神道 どこが違うか)

※1福音書:新約聖書の冒頭の『マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ』の4巻。キリストの教訓や一生を記す。

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