憲法を考える④
第3章 国民の権利及び義務
第15条 『①公務員(こうむいん)※1を選定(せんてい)※2し、及(およ)びこれを罷免(ひめん)※3することは、国民固有(こくみんこゆう)※4の権利(けんり)※5である。
②すべて公務員は、全体の奉仕者(ほうししゃ)※6であって、一部(いちぶ)※7の奉仕者ではない。
③公務員の選挙(せんきょ)については、成年者(せいねんしゃ)※8による普通選挙(ふつうせんきょ)※9を保障(ほしょう)※10する。
④すべて選挙における投票(とうひょう)※11の秘密(ひみつ)※12は、これを侵(おか)し※13てはならない。選挙人(せんきょにん)※14は、その選択(せんたく)※15に関(かん)し※16公的(こうてき)※17にも私的(してき)※18にも責任(せきにん)※19を問(と)われない※20。』
第16条 『何人(なんぴと)※21も、損害(そんがい)※22の救済(きゅうさい)※23、公務員の罷免、法律(ほうりつ)※24、命令(めいれい)※25又は規則(きそく)※26の制定(せいてい)※27、廃止(はいし)※28又は改正(かいせい)※29その他の事項(じこう)※30に関し、平穏(へいおん)※31に請願(せいがん)※32する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇(さべつたいぐう)※33も受けない。』
第17条 『何人も、公務員の不法行為(ふほうこうい)※34により、損害を受けたときは、法律の定める※35ところにより、国又は公共団体(こうきょうだんたい)※36に、その賠償(ばいしょう)※37を求めることができる。』
※1公務員:国または地方公共団体(ちほうこうきょうだんたい)の公務(こうむ)を担当(たんとう)し執行(しっこう)する者。各議員・知事・市区町村長を含む国家・地方公務員。 ※2選定:選(えら)び定(さだ)めること。 ※3罷免:職務(しょくむ)をやめさせること。 ※4国民固有:その国の国籍(こくせき)を持つ人々がもともともっているもの。 ※5権利:ある事をしてよい、またはしなくてよいという資格(しかく) ※6奉仕者:国家(こっか)・社会などのために、損得(そんとく)を考えずに尽(つく)す者。 ※7一部:全体(ぜんたい)のある部分(ぶぶん)。 ※8成年者:人の知能(ちのう)・身体(しんたい)が十分(じゅうぶん)に発達(はったつ)したとみなされる年齢(ねんれい)の者。現法(げんぽう)では満20歳以上。 ※9普通選挙:選挙人(せんきょにん→※14)の資格(しかく)を納税額(のうぜいがく)、財産等(ざいさんとう)で制限(せいげん)することなく、成年者(せいねんしゃ)が等(ひと)しく投票資格(とうひょうしかく)を認(みと)められるというもの。 ※10保障:[国・財産(ざいさん)・命(いのち)・権利(けんり)などが]おかされないよう守ること。※11投票:各人(かくじん)が選出(せんしゅつ)したい人の名や賛否(さんぴ)の意見(いけん)を、規定(きてい)の用紙(ようし)に書いて出すこと。 ※12秘密:公開(こうかい)しないこと。 ※13侵す:立ち入(い)ってはならない所に、無理(むり)に入(はい)り込(こ)む。 ※14選挙人:選挙権(せんきょけん)を有(ゆう)する者。 ※15選択:いくつかの中からよいものを選(えら)ぶこと。 ※16関する:ある物事(ものごと)にかかわる。 ※17公的:おおやけであるさま。自分以外もすべて。⇔私的 ※18私的:個人的(こじんてき)。自分だけ。⇔公的 ※19責任:しなくてはならないつとめ。 ※20問われない:問題(もんだい)にしない。 ※21何人:どんな人。 ※22損害:そこなうこと。 ※23救済:災害(さいがい)・不幸(ふこう)・経営不振(けいえいふしん)などから人を救(すく)うこと。 ※24法律:国会(こっかい)で制定(せいてい)された法規範(ほうきはん)、決まりごと。 ※25命令:国の行政機関(ぎょうせいきかん)が制定(せいてい)する法(ほう)の形式(けいしき)の総称(そうしょう)。政令(せいれい)・省令(しょうれい)など。 ※26規則:行為(こうい)や手続(てつづ)きなどのよりどころとなるきまり。 ※27制定:法律(ほうりつ)・規則(きそく)などを、作(つく)り定(さだ)めること。 ※28廃止:いままであった制度(せいど)・設備(せつび)などをなくすこと。 ※29改正:適正(てきせい)なものになおすこと。 ※30事項:一つ一つのことがら。項目。 ※31平穏:事件(じけん)もなく穏(おだ)やかなさま。 ※32請願:国民が、国会や内閣(ないかく)、公共団体(こうきょうだんたい)に、その損害(そんがい)の救済(きゅうさい)、公務員(こうむいん)の罷免(ひめん)、法令(ほうれい)・規則(きそく)の制定(せいてい)や改廃(かいはい)などについて不満(ふまん)や希望(きぼう)を文書(ぶんしょ)で申(もう)し述(の)べること。 ※33差別待遇:分(わ)けへだて・差(さ)のある取(と)り扱(あつか)い。 ※34不法行為:法(ほう)にそむく行為(こうい)。人の道に外(はず)れる行為。 ※35定める:一つのものに決める。 ※36公共団体:法令(ほうれい)に従(したが)って国家からその存立目的(そんりつもくてき)を与(あた)えられている法人団体(ほうじんだんたい)。地方公共団体(ちほうこうきょうだんたい)・農業協同組合(のうぎょうきょうどうくみあい)など。 ※37賠償:他人(たにん)や外国(がいこく)に与(あた)えた損害(そんがい)をつぐなうこと。
上記(じょうき)の憲法15条1項(こう)では「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めています。これは、ある人を公権力(こうけんりょく)の行使者(こうししゃ)である公務員の地位(ちい)につけたり、その地位を奪(うば)ったりすることは、国民が当然(とうぜん)にもっている権利であるということを意味(いみ)します。国民は代表者(だいひょうしゃ)を選ぶ選挙権(せんきょけん)や、逆(ぎゃく)にやめさせる罷免権(ひめんけん)という形で、国家の政治に参加(さんか)する権利、参政権(さんせいけん)を持っているのです。
憲法上、国民によって直接(ちょくせつ)選ばれるのは、国会議員(こっかいぎいん)、地方公共団体(ちほうこうきょうだんたい)の首長(しゅちょう)、地方議会(ちほうぎかい)の議員です。罷免については、最高裁判所裁判官(さいこうさいばんしょさいばんかん)の国民審査(こくみんしんさ)の制度(せいど)があります。このように、一般職公務員(いっぱんしょくこうむいん)も含(ふく)めたすべての公務員が国民によって選定(せんてい)・罷免(ひめん)されるというわけではありません。たとえば内閣総理大臣(ないかくそうりだいじん)、国務大臣(こくむだいじん)、裁判官などの選定・罷免については、国民ではない他の選定罷免権者(せんていひめんけんじゃ)が憲法に定められています(6、67、68、79条)。ただし、その選定罷免権者は何らかの形で国民との関係をもっています。つまり、公務員の地位が何らかの形で国民とのつながりをもてばよいということを示(しめ)しています。
請願(せいがん)とは、国民がみずからの政治的な意思(いし)を国家に対して表明(ひょうめい)する手段(しゅだん)です。その意味では参政権(さんせいけん)の一部ともいえます。国家機関(こっかきかん)は、適法(てきほう)な手続(てつづ)きと形式(けいしき)を備(そな)えた請願があった場合(ばあい)、これを受理(じゅり)するよう義務(ぎむ)づけられているといえます。また請願を受理した機関は、その趣旨(しゅし)を生かす政治的・道徳的(どうとくてき)な責任(せきにん)を負(お)っているといえます。
(引用文献:図解雑学 憲法)
Thursday, January 11, 2007
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