Wednesday, January 10, 2007

憲法を考える③

第3章 国民の権利及び義務
第10条 『日本国民たる要件(ようけん)※1は、法律(ほうりつ)でこれを定(さだ)める※2。』
第11条 『国民は、すべての基本的人権(きほんてきじんけん)※3の享有(きょうゆう)※4を妨(さまた)げ※5られない。』
第12条 『この憲法が国民に保障(ほしょう)※6する自由及び権利(けんり)※7は、国民の不断(ふだん)※8の努力(どりょく)※9によって、これを保持(ほじ)※10しなければならない。又、国民は、これを濫用(らんよう)※11してはならないのであって、常(つね)に公共(こうきょう)※12の福祉(ふくし)※13のためにこれを利用する責任(せきにん)※14を負(お)ふ※15。』
第13条 『すべて国民は、個人として尊重(そんちょう)※16される。生命、自由、及(およ)び幸福追求(こうふくついきゅう)※17※18に対する国民の権利については、公共の福祉に反(はん)しない限(かぎ)り、立法(りっぽう)※19その他の国政(こくせい)※20の上で、最大(さいだい)の尊重を必要(ひつよう)とする。』
第14条 『①すべて国民は、法の下(もと)に平等(びょうどう)※21であつて、人種(じんしゅ※22信条(しんじょう)※23、性別、社会的身分(しゃかいてきみぶん)※24、または門地(もんち)※25により、政治的(せいじてき)※26、経済的(けいざいてき)※27、または社会的関係(しゃかいてきかんけい)※28※29において、差別(さべつ)※30されない。
②華族(かぞく)※31その他の貴族(きぞく)32の制度(せいど)※33は、これを認めない。
③栄誉(えいよ)※34、勲章(くんしょう)※35その他の栄典(えいてん)※36の授与(じゅよ)※37は、いかなる特権(とっけん)※38も伴(ともな)※39は(わ)ない。栄典の授与は、現(げん)に※40これを有(ゆう)し、又は将来(しょうらい)これを受ける者の一代(いちだい)※41に限(かぎ)り、その効力(こうりょく)※42を有する。』

※1要件:必要な条件。 ※2定める:決定する。決める。 ※3基本的人権:すべての人間が生まれながらに持っている権利。 ※4享有:権利・能力(のうりょく)など無形(むけい)のものを生まれながらに持っていること。 ※5妨げ(る):物事の進行をじゃまする。 ※6保障:(国・財産・命・権利などが)おかされないよう守ること。 ※7権利:あることをしてよい、またはしなくてもよいという資格。 ※8不断:たえまなく続くさま。つねひごろ。 ※9努力:力をつくしてはげむこと。 ※10保持:もちつづけること。また、もつこと。 ※11濫用:むやみにつかうこと。 ※12公共:おおやけ。社会一般。 ※13福祉:幸福。しあわせ。 ※14責任:しなくてはならないつとめ。 ※15負ふ:ひきうける。身に受ける。 ※16尊重:とうといものとして大事に扱(あつか)うこと。 ※17幸福:望(のぞ)んでいることが十分にかなってしあわせであるさま。 ※18追求:ほしいものをどうしても手に入れようと追い求めること。 ※19立法:法律を定めること。 ※20国政:国の政治。 ※21平等:すべて等(ひと)しく差別(さべつ)がないさま。 ※22人種:体格(たいかく)・皮膚(ひふ)の色・毛髪(もうはつ)などの身体的特徴(しんたいてきとくちょう)によって区分(くぶん)した人類(じんるい)の集団(しゅうだん)。 ※23信条:かたく信じ守っていることがら。信仰(しんこう)の教義(きょうぎ)。※24社会的身分:世の中、世間(せけん)での地位(ちい)・境遇(きょうぐう)。 ※25門地:家(いえ)がら。 ※26政治的:政治に関(かん)する。 ※27経済的:経済に関する。 ※28社会的:社会に関する。 ※29関係:かかわりあい。 ※30差別:差をつけること。異(こと)なった扱(あつか)い。 ※31華族明治時代(めいじじだい)の華族令(かぞくれい)による身分(みぶん)の一つ。・候・伯・子・男の五爵位(ごしゃくい)。1947年止(はいし)。 ※32貴族:社会的・政治的な特権(とっけん)をもつ上流階級(じょうりゅうかいきゅう)。(めぐ)まれた状態(じょうたい)に安住(あんじゅう)する者。 ※33制度:社会のしくみ。 ※34栄誉:名誉(めいよ)。 ※35勲章:国家(こっか)や社会に尽(つく)した功労者(こうろうしゃ)に国が与(あた)える記章(きしょう)。 ※36栄典:国家に対する功労者の名誉をたたえるために天皇(てんのう)から授(さず)けられる位階(いかい)・勲章など。 ※37授与:授け与えること。 ※38特権:ある特別(とくべつ)の身分(みぶん)・階級(かいきゅう)の人だけがもっている権利。 ※39伴う:ついて行く。あわせ持つ。 ※40現に:現実(げんじつ)に。実際(じっさい)に。 ※41一代:ひとりの人の一生涯(いっしょうがい)。 ※42効力:よい結果(けっか)やききめをもたらす力。

18~19世紀(せいき)の近代市民革命期(きんだいしみんかくめいき)の人権宣言(じんけんせんげん)は、国家からの経済的自由(けいざいてきじゆう)・精神的自由(せいしんてきじゆう)・人身(じんしん)の自由が中心でした。これは個人(こじん)の生活領域(せいかつりょういき)に国家が介入(かいにゅう)してはならないことを前提(ぜんてい)とするものです。これらの権利は自由主義経済(じゆうしゅぎけいざい)の発展(はってん)を導(みちび)きましたが、反面(はんめん)、社会に貧困(ひんこん)や失業(しつぎょう)などの問題(もんだい)を起(お)こす一因(いちいん)ともなってきました。

そこで20世紀、貧困・失業問題などを克服(こくふく)するため生存権(せいぞんけん)ないし社会権といわれる権利が登場(とうじょう)します。社会権とは、貧(まず)しい人や失業者など社会的・経済的弱者(けいざいてきじゃくしゃ)が「人間らしい生存(せいぞん)」を保障(ほしょう)されるように、国家に積極的(せっきょくてき)な配慮(はいりょ)を求(もと)める権利です。日本国憲法も自由権とともに社会権を保障しています。

人間はだれでも、お互(たが)いを尊重(そんちょう)しながら幸福(こうふく)を追求(ついきゅう)して生きていく権利があります。この権利を幸福追求権(こうふくついきゅうけん)といい、憲法13条後段(こうだん)で「生命・自由及び幸福追求に対する・・・・・・立法(りっぽう)その他の国政(こくせい)の上で、最大(さいだい)の尊重を必要(ひつよう)とする」と定(さだ)められ、保障されています。
(引用文献:図解雑学 憲法)

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