Saturday, January 06, 2007

憲法を考える①

日本国憲法(にほんこくけんぽう) 前文
『日本国民は、正当(せいとう)に選挙(せんきょ)された国会(こっかい)における代表者(だいひょうしゃ)を通(つう)じて行動し、われらとわれらの子孫(しそん)のために、諸国民(しょこくみん)※1との協和(きょうわ)による成果(せいか)と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢(けいたく)※3を確保(かくほ)し、政府(せいふ)の行為(こうい)によつて再(ふたた)び戦争の惨禍(さんか)※4が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権(しゅけん)※5が国民に存(ぞん)する※6ことを宣言(せんげん)し、この憲法を確定(かくてい)※7する。そもそも国政(こくせい)は、国民の厳粛(げんしゅく)※8な信託(しんたく)※9によるものであつて、その権威(けんい)※10は国民に由来(ゆらい)※11し、その権力(けんりょく)は国民の代表者がこれを行使(こうし)※12し、その福利(ふくり)※13は国民がこれを享受(きょうじゅ)※14する。これは人類普遍(じんるいふへん)の原理(げんり)※15であり、この憲法は、かかる原理に基(もとづ)くものである。われらは、これに反(はん)する一切(いっさい)※16の憲法、法令(ほうれい)、及(およ)び詔勅(しょうちょく)※17を排除(はいじょ)※18する。
 日本国民は、恒久(こうきゅう)※19の平和を念願(ねんがん)※20し、人間相互(にんげんそうご)の関係(かんけい)を支配(しはい)する崇高(すうこう)※21な理想(りそう)を深く自覚(じかく)するのであつて、平和を愛する諸国民の公正(こうせい)※22と信義(しんぎ)※23に信頼して、われらの安全と生存(せいぞん)を保持(ほじ)※24しようと決意(けつい)した。われらは、平和を維持(いじ)し、専制(せんせい)※25と隷従(れいじゅう)※26、圧迫(あっぱく)※27と偏狭(へんきょう)※28を地上から永遠に除去(じょきょ)※29しようと努めてゐ(い)る国際社会(こくさいしゃかい)において、名誉(めいよ)※30ある地位(ちい)を占(し)め※31たいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖(きょうふ)と欠乏(けつぼう)※32から免(まぬ)かれ※33、平和のうちに生存する権利を有(ゆう)することを確認(かくにん)する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念(せんねん)※34して他国を無視(むし)してはならないのであつて、政治道徳(せいじどうとく)の法則(ほうそく)は、普遍的(ふへんてき)※35なものであり、この法則に従(したが)ふことは、自国の主権を維持(いじ)し、他国と対等関係(たいとうかんけい)※36に立たうとする各国の責務(せきむ)※37であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。』

※1諸国民:ほうぼうの国の人々。 ※2協和:たがいに心を合わせて仲よくすること。 ※3恵沢:恩恵(おんけい)をうけること。めぐみ。 ※4惨禍:地震・風水・戦争などによるいたましい災難。むごいわざわい。 ※5主権:国の政治を最終的に決定する権力。 ※6存する:ある。存在する。 ※7確定:はっきりと決定すること。 ※8厳粛:おごそかで心がひきしまるようす。きびしく動かしがたいようす。 ※9信託:相手を信用してまかせ頼むこと。 ※10権威:信頼性。 ※11由来:そこがもとになっていること。 ※12行使:武力・権力・権利などを実際につかうこと。 ※13福利:幸福と利益。 ※14享受:受け入れて、生活や心を豊かにすること。 ※15人類普遍の原理:すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳(そんげん)と権利とについて平等である、との理論、考え方。 ※16一切:すべて。全部。 ※17詔勅:天皇の意思(いし)・命令を表示する文書などの総称。 ※18排除:不要なものや障害(しょうがい)をとりのぞくこと。 ※19恒久:いつまでも変わらずにつづくこと。 ※20念願:いつも心にかけて願っていること。また、その願い。 ※21崇高:気高(けだか)くて尊(とうと)いさま。※22公正:公平(こうへい)で正しいこと。 ※23信義:約束を守り、義務を果(は)たすこと。 ※24保持:もちつづけること。また、もつこと。 ※25専制:他人の意見を聞かず、物事を自分の思うままに決めて行うこと。 ※26隷従:他の言いなりになること。 ※27圧迫:相手の行動を制約すること。おびやかすこと。 ※28偏狭:度量(どりょう)のせまいこと。  ※29除去:(じゃまなものなどを)とりのぞくこと。 ※30名誉:すぐれている、価値があると世に認められること。また、そのさま。 ※31占め(る):ある位置・場所を自分のものとする。 ※32欠乏:必要なものがとぼしくて足りないこと。 ※33免かれ(る):いやなことからのがれる。 ※34専念:一つのことに心を集中すること。 ※35普遍的:広く一般にゆきわたり、通用しているさま。 ※36対等関係:双方(そうほう)に優劣(ゆうれつ)・上下などの差のない関(かか)わりあい。 ※37責務:果たすべきつとめ。

わが国の憲法である日本国憲法の前文部分を読んだのは今回が初めてである。きっと、これは日本国民の一人として恥(は)ずべきことなのだろう。法学系の学校や仕事に進んだ方、または法律に興味を持っている方であれば知っていて当然なのだろうが、私の学校時代を思い出してみても、授業でこれを朗読(ろうどく)さえした記憶が無い。何かのテレビ番組でも誰かが言っていた。縄文時代や江戸時代は小学校、中学校、高校と繰り返し勉強するが、こと近代史については時間が余ればやる、といった調子。実は「歴史(日本史・世界史)」における近代史と、「現代社会」とは密接な、と言うより直結の関係にあり、若者が社会へと出てゆくに当たり、最も重要な学習範囲として考えなければならないはずである。この大事であろう近代史~現代史を軽視させなければいけない何かが働いていた、と採(と)れないでもない。歴史は過去を繰り返すために学ぶものではない。新しい未来を考え、創(つく)り出すために学ぶ、数多き教養(きょうよう)の一つに過ぎない。

この前文、難(むずか)しい言葉が多く出てくるので、辞書無しでは読み誤(あやま)る恐(おそ)れがある。この憲法が制定された時代背景(じだいはいけい)も良く考えながら、より正しい解釈(かいしゃく)をしてゆきたいと思う。

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