ひとりごとⅩ⑩
憲法60年 迎えた岐路 中曽根康弘元首相インタビュー
日本国憲法は3日、施行60年を迎えた。盛り込まれた象徴天皇制と国民主権、平和主義と戦争放棄、基本的人権の尊重などの考え方は戦後日本の道筋を示す大きな役割を果たした一方、9条を巡り現実とのずれを指摘する声も少なくない。安倍晋三首相は改憲への意欲を表明。国会では間もなく改憲手続きを定める国民投票法が成立する。曲がり角を迎えた憲法のこれまでとこれからについて中曽根康弘元首相(群馬県高崎市出身)に聞いた。=以下、記事より抜粋=
(現憲法の)問題にすべきは前文。日本語でもないような日本語でだらだら。やはり前文はその国の過去、現在、未来をうたった国家像が出てこないといけない。
── 憲法作成はどんな手順を想定していましたか。── (軍隊から)復員してきたときに同じ短期現役士官だった連中らで日本再生をどうするかという研究会をつくって、国家の大まかな構造をどうするかという議論をした。当時はマッカーサー司令部の締め付けが非常に厳重で、反占領政策的なことは一切言えない。そういう中で民族的なエネルギーとか、エトス※1とかをどう生かしていくべきか、と。心配していたのは、天皇制の護持と共産党の乱暴さだ。国家構造をつくっていくには官僚ではダメ。マッカーサー司令部に対決するためにも政治家でないとできない。それで衆院議員になった。
── 現憲法をどう評価しますか。 ── 過去の憲法にはそれぞれ功罪があり、それを正当に評価しないといけない。歴史主義という考え方だ。現在の昭和憲法は悲劇的な憲法で、出生の秘密から議論される不幸がある。占領下で外国の影響のもとにつくられたものをいつまでも続けるべきではない。一面で革命的な功績がある。民主主義、自由主義を日本に入れ、統制経済を離れ、自由経済になる。そういう社会構造の大変革をやった。
明治憲法は近代国家体制をつくったが、統帥権※2独立という政治的波乱を生み、軍人の横暴が極まり、大東亜戦争まで行った。そこに重大な欠陥があった。権威※3は天皇にあり、権力※4は首相にあるという体系に戻ったのは非常によい。
── 改正すべきはどの辺ですか。 ── 安倍君は「美しい日本」という。前文も文化や伝統を入れた美しい日本語でなくてはならない。全面的に今のは直さなければならない。
── 最も議論になるのはやはり9条でしょう。 ── (戦争放棄を定めた)1項は今のままにして不戦条約の条項を入れる。(戦力不保持の)2項は改め、国の独立と繁栄を守るための防衛軍を設立し、正式に自衛権を認める。3項を新設し、国連や人権・人道のための国際協力の場合は防衛軍が出動できる。武器使用基準は安全保障基本法で決める。統帥権は首相にある、というような改正が頭にある。
── 集団的自衛権の行使は認めますか。 ── 国を防衛することの中に集団的自衛権も含まれる。含まれているのを使わないとすることはあり得ない。
── 安倍首相は改憲を7月の参院選の争点の一つに据(す)える意向です。 ── 憲法改正の内容について国民は知らされていない。だから抽象的な改憲論や新しい時代のための基本法をつくろうという程度の議論になってしまっている。安倍君はおそらく憲法改正を訴えるが、もう一つ大事なのは教育改革だ。いじめっ子とか、幼児教育に関する問題が割合、俎上(そじょう)※5に出てくる。憲法は脇になり、教育が主になるかもしれない。
── 自身も先頭に立たれますか。 ── おまえがやれ、ということで新憲法制定議員同盟というのをつくらされた。民主党にもつくってもらおうと思っている。
── 国民投票法をつくったときの首相が参院選で退陣したら改憲は遠のくと思いますか。 ── 負けた場合にも内閣は衆院の多数があるから辞職はしない。しかし政局が動き出すスタートとなる。(以上、5月3日付日本経済新聞)
※1エトス:人間の持続的な心の状態をいう。ふつう社会的・民族的な慣習・風俗をいい、また、道徳の意にも用いる。※2統帥権:軍隊を統率し指揮する力、権利。※3権威:①人をおさえつけて従わせる力。人がひれ伏し従うような卓越した力。②学問・技術など、その道のすぐれた専門家。第一人者。オーソリティー。③信頼性。※4権力:他人を強制し、服従させる力。支配者が被支配者に加える社会的強制力。※5俎上:まな板の上。
2ch.スレ:【政治】安倍首相「憲法改正を国民に宣言」 参院選争点化を改めて強調
「日本沈没まで、あと35日」
Sunday, June 24, 2007
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