Tuesday, June 19, 2007

ひとりごとⅩ②

第37代総理大臣 岸信介Ⅲ
安保条約改定で戦後総決算に成功(つづき)
岸の本当の狙いは、自主独立だったが、そのために、まず東南アジアや国民政府との関係を修復し、それから米国に頼れるパートナーとして認められようと交渉に臨むという周到さが彼にはあった。この改定の方向は、当時の現実のなかではおおむね合理的なものだったのだが、それが、厳しい反対運動に直面したのはいくつもの理由があった。革新勢力からすれば、安保条約は百歩譲っても講和のための暫定的な措置だからいずれ廃止が当然ということになるが、それを別にしても、岸の事の進め方はやや荒っぽすぎた。第一に解釈に曖昧なところがあり政府の答弁も揺れ動き、国際紛争に巻き込まれる危険がないと説得的に説明できなかった。第二にこれが憲法改正行きすぎた防衛力の増強に結びつく疑念があった。第三に、反対運動を抑え込むために、予防的に警職法の改正や教員の勤務評定の実施が図られ、岸の経歴ともあいまって反動的においを嗅ぎつけられた。結局のところは、反安保の大衆闘争が空前の盛り上がりをみせるなかで、アイゼンハワー大統領の来日は中止され、治安維持のために自衛隊の出動まで議論されるなかで、万策(ばんさく)尽きて退陣を表明せざるを得なかった。岸が構築した外交の枠組みには賛否の議論があったが、その後の日本に長い幸福な時代をもたらしたのだから、少なくとも結果論においては間違いではなかったとみるべきだろうし、岸以外がそれをやり遂げられたかといえば、なかなか難しかったというべきだ。ともかく、官僚としての岸について論じたように、この人物の構想力や交渉相手への説得能力は、世界水準としても通用するもので近代日本でも最高の高みにあった。(引用:歴代総理の通信簿 間違いだらけの首相選び 八幡和郎著)

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