ひとりごとⅢ④
真っ赤に熟れたトマトはとっても美味しい。何でも旬を迎えた食べ物は美味しいし、その栄養価も季節外れのものと比べて高いという話。今ではハウス栽培のおかげでスーパーや八百屋さんで何時でも目にすることができます。今のはどうだか分りませんが、昔に食べた記憶だと、ハウス物は中身がカシュカシュしていたように思います。包丁で半分に切ると、その包丁にトマトの果肉のカシュカシュがくっついてくる・・・、何となく伝わりませんかね。そのカシュカシュはトマトジュースを飲んだあとのグラスの表面に付着してくるような、ちょっとスイカの果肉にも似た・・・、何となく伝わりませんかね。やはり、外でお日様の光をたっぷりと浴び(光合成)、朝晩と日中との寒暖の差の中で、生きる力を存分に発揮して付けた、その熟れたトマトの実が一番美味しいのではないかと思う。
さて、我々ヒトの場合はどうだろうか。ヒトの温室栽培なんて有り得ないだろうが、それに似た環境は実際有るのではないだろうか。経済的、社会的に恵まれた環境で生まれ育った人も居れば、それと相対する環境で生まれ育った人もいる。もし、この両者の潜在的に持つ物が同じだとして、それぞれがいい大人になったとき、両者の違いはどう出るだろうか。これより前者を「温室(おんしつ)くん」、後者を「自然物(しぜんもの)くん」と呼ぶ。
さてさて、温室くんは地元で常にチヤホヤされ、小学校において虐(いじ)めることはあっても、虐められることは一切無かった。それに対し自然物くんは、いつも綻(ほころ)びた服を着ていたものだから、小学校で「虫食い野郎」と呼ばれては虐められた。でも、自然物くんは歯を食いしばって学校へと通い続けた。温室くんは小学校を卒業すると、私立中学校へと進んだ。幼稚園から大学までエスカレーター式で進学できる学校らしい。一方、自然物くんは地元の公立中学校へと進み、温室くんとはここで離れることとなった。中学校へと進んだ自然物くんには新しい素敵な出会いもあったが、残念なことにその逆もあった。成長の遅かった自然物くんは中学校で「チビ」と呼ばれ、また違う同級生らに虐められた。でも、自然物くんは小学校での虐めに我慢しただけあって、ここでも何とか我慢して学校へと通い続けた。そして受験勉強もしっかりして、地元の公立高校へと進んだ。高校では中学校時代の顔がかなり減った。また新しい素敵な出会いもあったが、やはりその逆もあった。その内容は小学校や中学校の時よりもさらにエスカレートしたものだったが、ここでも自然物くんは耐え抜いた。そして、自然物くんは悩み続けながらも、常に前向きに色々な物を見たり、聞いたり、触れたり、考えたり、とにかく行動した。その溢(あふ)れる好奇心が虐めに対抗する気力を彼に与え続けたのかもしれない。その後、温室くんは難無(なんな)く大学を卒業し、コネで有名企業へと入社した。一方、自然物くんは何とか大学を卒業し、温室くんと同じ年に何とか社会へ出ることができた。
その後の展開は予想できてしまうかもしれません。どういった結末にするかはあなた次第です。それぞれが持つ価値観や倫理観の違いによって、果たして十人十話となるのでしょうか。
Friday, December 22, 2006
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