Thursday, February 15, 2007

憲法を考える【最終章】~信教の自由につながる政教分離

国家と宗教の結びつきを禁止する
日本国憲法(にほんこく・けんぽう)は、明治憲法下(めいじ・けんぽう・か)で信教(しんきょう)の自由(じゆう)が侵害(しんがい)された苦(にが)い経験(けいけん)、また、宗教(しゅうきょう)と国家(こっか)の結(むす)びつきにより信教の自由が迫害(はくがい)されてきた人類(じんるい)の歴史的(れきしてき)経験から、政教分離(せいきょう・ぶんり)の規定(きてい)を置(お)いています。憲法20条では、「いかなる宗教団体(だんたい)も、国から特権(とっけん)を受け、又(また)は政治上(せいじじょう)の権力(けんりょく)を行使(こうし)してはならない」(1項後段)、「国及びその機関(きかん)は、宗教教育(きょういく)その他いかなる宗教的活動(かつどう)もしてはならない」(3項)と定(さだ)め、国家と宗教の結びつきを禁止(きんし)しています。さらに、89条で「公金(こうきん)その他の公(おおやけ)の財産(ざいさん)は、宗教上の組織(そしき)若(も)しくは団体の使用(しよう)、便益(べんえき)若しくは維持(いじ)のため、・・・これを支出(ししゅつ)し、又はその利用(りよう)に供(きょう)してはならない」と定め、財政面(ざいせいめん)からも国家と宗教の間に壁(かべ)をつくることで信教の自由を保障(ほしょう)しています。

政権分離違反が争われた津地鎮祭事件・愛媛玉串料訴訟
以上(いじょう)のような政権分離について、裁判(さいばん)で争(あらそ)われた例(れい)として、津地鎮祭事件(つ・じちんさい・じけん)※1があります。市が体育館建設工事の起工(きこう)に際(さい)して、神社神道式(じんじゃ・しんとう・しき)※2の地鎮祭を行(おこな)って、政教分離に反(はん)しないかどうかが問題(もんだい)となりました。これについて最高裁(さいこうさい)※3は、地鎮祭は風習(ふうしゅう)としての行事(ぎょうじ)であり、宗教的活動には当(あ)たらないと判断(はんだん)しました(1977年)。また、愛媛県知事(えひめけん・ちじ)が靖国神社(やすくに・じんじゃ)、県護国神社(けん・ごこく・じんじゃ)へ玉串料(たまぐしりょう)※4を公費(こうひ)として支出したことが争われた事件もあります【愛媛玉串料訴訟(えひめ・たまぐしりょう・そしょう)】。このとき最高裁は、玉串料の奉納(ほうのう)※5は宗教的活動に当たるとして、この行為(こうい)を憲法違反(けんぽう・いはん)であると判断しました(1997年)。(引用文献:図解雑学 憲法)

※1地鎮祭:土木(どぼく)・建築工事(けんちくこうじ)にとりかかる前に、土地(とち)の神を祭(まつ)って工事の安全(あんぜん)や無事(ぶじ)を祈(いの)る式典(しきてん)。 ※2神道:国家的・民族的(みんぞくてき)な神(かみ)を敬(うやま)い、祖先(そせん)をあがめることを根本(こんぽん)とする日本固有の宗教。 ※3最高裁:最高裁判所(さいこうさいばんしょ)の略(りゃく)。司法権(しほうけん)の最高機関。 ※4玉串料:祈願者(きがんしゃ)の願(ねが)いを神様(かみさま)にお聞きいただくための神様への御供(おそな)え。 ※5奉納:神仏(しんぶつ)にさしあげること。

「日本沈没まで、あと157日」

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