Saturday, September 15, 2007

Over The Rainbow

立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
週刊現代が暴いた“安倍スキャンダル”の全容
前回、「安倍首相が入院したら、そのまま出てこない恐れがある」と書いたが、その通りになった。

慶応病院の医者の発表では、3,4日の入院が必要という。しかし、病院側の記者会見でも、その理由がさっぱりわからない。

病名は機能性胃腸障害といっていたが、これは要するに、これといって原因が特定できるような病気は何もないが、「お腹の調子が悪い」ということなのである。

何しろ、内視鏡を入れて胃腸の内部をじっくり検査したが、目に見える異常は何も発見できなかったので、「機能性胃腸障害」というほかない、というのが医者の説明だった。

緊急入院に隠された本当の理由
機能性胃腸障害が起きた原因としては、「肉体疲労」「精神ストレス」「社会的心理的ストレス」といったことがあげられるという。

要するに、ストレスがかかると、すぐにものが食べられなくなったり、下痢腹になってしまう、先天的に胃腸が弱い人がいるが、安倍首相はその典型なのだ。そのような人は、政治家のようにストレスが多い職業に向かない。

本当は安倍首相はこの日3時から開かれる予定の自民党両院議員総会に出席する予定だった。そこで自分の辞任の理由を説明することになっていた。しかし、医者がそんなことをしたら病状を悪化させるばかりだといって、両院議員総会への出席をとりやめさせた、という説明である。

しかし、この説明が説明になっていないのは明らかだった。担当医はウソを言うつもりがもともとないらしく、言葉のはしばしに真実がにじみ出てしまう。

医師の表情からにじみ出た真実
たとえば、では、入院させて、どのような加療を行うのかと問われると、なにせ、特定の病因があるわけではなく、胃腸の調子が悪い(「機能性障害」)だけなのだから、特別の治療があるわけではない。基本的にクスリを飲ませるだけであると医者は説明した。

ではどんなクスリか。

「胃酸が足りないようなら胃酸を出させるクスリを、胃の運動が足りないようなら、胃の運動を高めるクスリを」

要するに普通の胃腸薬を処方するだけなのだ。3,4日の入院を必要とする加療とはとても考えられない内容である。

こういう説明をつづける医師の表情にも、真実がにじみ出していた。

つまり、形式ばった、とってつけたような説明をもっともらしくやらされているだけです、とでもいうような表情が、ときどき浮かべる苦笑からはっきり読みとれた。

一般の人が見るニュース用に編集された映像からは、そこまでうかがえなかっただろうが、私はたまたまナマの記者会見をはじめから終わりまで見てしまったので、それがおかしいくらいよくわかった。

発売前の週刊現代記事を巡る前哨戦
要するに、安倍首相はあれだけ訳がわからない突然の辞任をしてしまったために、いま表に出たら、たちまちあらゆる方面から、理由追及の矢が飛んできて、火ダルマになるのが目に見えている。しばらく病院の中に隠れて、ほとぼりがさめるのを待とうということなのだろう。

とりわけ、前回書いたようにこの土曜日発売の「週刊現代」に、安倍首相の政治資金がらみで、「相続税3億円脱税」疑惑という大特集記事が出ることがわかっているから、その記事が出るまでは、病院に隠れていようということなのだろうと思う。

入院しないで、官邸で通常通りしているところにその記事が出たら、安倍首相にはその件で取材が殺到すること必至なのである。

私は「週刊現代」の仕事もずっとしてきた関係上、知人を通して内容の一部を最近知るにいたったが、これはナミの週刊誌の記事ではない。何年にもわたる取材の厚みが出ていて、ここまでやられたら、安倍首相もやめざるをえないだろうというほど中身たっぷりの記事なのだ。

実は一昨日(9月12日)のうちから、この記事をめぐって激しい前哨戦が繰り広げられている。

辞任当日の毎日新聞9月12日夕刊が、安倍首相の「脱税疑惑」を週刊現代が取材していると報じたことは前回すでに書いた。

まだ存在しない記事に対する安倍事務所の反撃
そのちょっとあと(12日20時34分)から、時事通信が“「脱税疑惑」全くの誤り=週刊誌取材に安倍事務所”

という速報ニュースを流した。

安倍事務所側の反撃がただちにはじまったのだ。さらに、同じ12日の夜23時52分になると、時事通信は

「週刊現代の取材に警告 相続税めぐり安倍事務所」

という記事が出てきた。その内容は、

「週刊現代に掲載予定の記事はまったく事実に反する。掲載しないよう警告する」という文書を安倍事務所が発表したというものだった。

「警告する」とは、法的措置を取るぞという脅しである。

つづき 》 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070914_scandal/index4.html

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